なぜ日本式のそろばんなのか
そろばんは、日本の教育で何世紀にもわたって使われてきた学習道具です。速い暗算の練習に向いていて、子どもはまず実際に珠を動かし、次に頭の中に珠を思い浮かべ、やがて道具なしで計算できるようになります。

実際の珠から暗算へ
実際に珠を動かす
手を使って位取りを学びます。珠ひとつが、数ひとつ。
珠を思い浮かべる
そろばんのイメージが頭の中に移ります。イメージで考える、右脳の思考です。
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暗算
何桁ものたし算・ひき算を、紙を使わずに速く正確に行います。
そろばんはどれも同じ?
そろばんは、どれも同じ「思考力を伸ばす算数」でしょう?
じつは、そろばんがどの国から来たかによって、学び方は大きく異なります。
いまベトナムでは、そろばんはどれも同じだと思われがちです。実際には、マレーシア式や日本式など、さまざまな学び方があります。また、フィンガーマス(指を使った計算法)と混同されることも少なくありません。
子どもにそろばんを習わせる目的や方針は、国ごとに違います。日本のそろばんは、粘り強く取り組む心の姿勢を鍛えながら、鋭く速い思考力も身につけるための道具です。
日本の教育とそろばん
そろばんは今も、日本で人気の習い事のひとつです。そろばん・サッカー・英語は、日本の子どもの三大習い事と言っても過言ではありません。
また、そろばんは日本の小学校の算数の学習指導要領にも含まれています(3・4年生)。
なぜ日本式なのか
そろばんは道具にすぎません。日本式が違うのは、授業の進め方です。そこで身につく習慣は、そろばんを片づけたあとも、ずっと子どもの中に残ります。
姿勢と型
背筋を伸ばして座り、そろばんを正しく置き、親指と人差し指を正しく使います。「どうやるか」も結果と同じくらい大切だと学びます。
集中力
時間を計る短い練習と読み上げ算で、授業のあいだ集中し続ける力を鍛えます。
あきらめない力
レベルが上がるごとに、求められることが少しずつ増えます。繰り返しの努力が結果につながること、テストに受からなくても終わりではなく通過点であることを学びます。
習慣と礼儀
授業の始めと終わりのあいさつ、道具の準備と片づけを自分ですること、先生や友だちへの敬意。
日本式そろばんで育つ6つの力
そろばんは右脳(イメージする力・暗算・集中)を育て、学校の算数は論理的な思考を育てます。両者は互いを強め合います。そろばんは学校の算数と競うものではなく、それを補うものです。
思考力が伸びる
数を珠のイメージで見るので、位や数のしくみを目で見てわかりやすく理解できます。ただ暗記するだけではありません。
計算が速くなる
毎回タイムを計って練習し、自分の解くスピードを少しずつ上げていきます。
集中力が高まる
正しい指の動かし方を守りながら正確な答えを出すには、目・手・脳を同時に働かせる必要があります。これが深く集中する習慣を育てます。
正確に計算できる
ひとつひとつの珠を丁寧に動かし、決められた時間の中で正しく解き切る力を育てます。
学ぶ意欲が高まる
タイムや点数を自分で記録するので、成長が目に見えます。「できた!」のうれしさが自信になります。
脳の発達をうながす
マス計算(左脳)と、そろばん・暗算(右脳)で、脳の両方を使います。
研究からわかっていること
そろばんと「頭の中のそろばん」は、認知科学や神経科学の研究者によって40年にわたり研究されてきました。研究の限界も含めて、率直にご紹介します。
数字をイメージとして覚える
日本のそろばん式暗算の熟達者は、約15〜16桁の数字を覚えられました(一般の大人は約7桁)。この強みは数字だけに見られ、文字や単語にはありません。数字がそろばんのイメージとして保持されているためです。(Hatano & Osawa, 1983)
より速く、より正確に
頭の中のそろばんを学んだ子どもは、学んでいない子どもより速く正確に計算しました。この計算は視覚・空間的な記憶にもとづくもので、位取りと結びついた3〜4桁ほどを同時に保持します。(Stigler, 1984; Frank & Barner, 2012)
視覚・空間の領域を使う
熟達者の脳画像では、未経験の人が使う言語の領域ではなく、視覚・空間に関わる領域が強く働いていました。これが、左脳とあわせて「右脳を鍛える」と言う意味です。(Tanaka et al., 2002; Hanakawa et al., 2003)
本当に身についたときに効果が出る
5〜7歳の子ども204名を対象にした3年間のランダム化比較試験では、計算力と位取りの理解が明らかに大きく伸びました(Cohen’s d:プログラムに沿った指標で約0.6、標準化テストで約0.24)。一方、1年間の別の試験でははっきりした差は見られませんでした。その年のうちに複数桁のイメージに習熟できた1年生が、約5分の1にとどまったためです。(Barner et al., 2016; 2017)
プログラムに生かしていること
いちばんはっきりした効果は、計算力そのものと位取りの理解に表れます。そしてそれは、子どもが頭の中のそろばんのイメージを本当に身につけたときにだけ現れます。そこでKSCのプログラムでは、難しくする前に習熟すること、短く・定期的に・集中して練習すること、数はいつも左の位から読むこと、各単元で3回テストすることを大切にしています。
私たちがお伝えしているのは、このプログラムが計算の流暢さ、位取りの理解、集中力、よい学習習慣を育てるということです。研究が支持しているのがその点だからです。より広い認知面の効果は可能性があり、今も研究が続いています。熟達者の結果は長年の練習によるものです。週1回で1〜3年学ぶ子どもの場合、結果はより控えめで、きちんと通うことと家庭での練習に左右されます。
参考文献
- Barner, D., Alvarez, G., Sullivan, J., Brooks, N., Srinivasan, M., & Frank, M. C. (2016). Learning mathematics in a visuospatial format: A randomized, controlled trial of mental abacus instruction. Child Development, 87(4), 1146–1158.
- Barner, D., Athanasopoulou, A., Chu, J., Lewis, M., Marchand, E., Schneider, R., & Frank, M. C. (2017). A one-year classroom-randomized trial of mental abacus instruction for first- and second-grade students. Journal of Numerical Cognition, 3(3), 540–558.
- Frank, M. C., & Barner, D. (2012). Representing exact number visually using mental abacus. Journal of Experimental Psychology: General, 141(1), 134–149.
- Hanakawa, T., Honda, M., Okada, T., Fukuyama, H., & Shibasaki, H. (2003). Neural correlates underlying mental calculation in abacus experts: A functional magnetic resonance imaging study. NeuroImage, 19(2), 296–307.
- Hatano, G., & Osawa, K. (1983). Digit memory of grand experts in abacus-derived mental calculation. Cognition, 15(1–3), 95–110.
- Stigler, J. W. (1984). “Mental abacus”: The effect of abacus training on Chinese children’s mental calculation. Cognitive Psychology, 16(2), 145–176.
- Tanaka, S., Michimata, C., Kaminaga, T., Honda, M., & Sadato, N. (2002). Superior digit memory of abacus experts: An event-related functional MRI study. NeuroReport, 13(17), 2187–2191.
保護者向けの無料の本(ベトナム語)
『大人のためのそろばん入門』。そろばんのしくみ、珠の動かし方、たし算・ひき算のルールをわかりやすく説明しています。

