そろばんを習うのは良いこと?悪い影響はない?そろばんを50年教えてきた教室の率直な答え
「そろばんを習うのは良いこと?」「そろばんに悪い影響はない?」――この2つは、保護者が体験授業に申し込む前にGoogleでいちばんよく調べる質問です。私たちは1976年から日本で、2022年からハノイでそろばんを教えてきました。だからこそ率直にお答えします。そろばんは正しく学べばとても良いものです。そして、まだ始めないほうがよい場合もあります。この記事では、その両方をお話しします。
はい、そろばんは5〜12歳の子どもにとって良い習い事です。計算が速く正確になり、位取りを自分の手で理解し、集中が長く続くようになり、数字に自信が持てるようになります。正しい方法で、その子のペースに合わせ、成績を追いかけすぎない教室で学べば、そろばんに「悪い影響」はありません。よくある心配――学校の算数と混乱する、そろばんに頼りきりになる、丸暗記になる――には、どれも避ける方法があります。以下でひとつずつ説明します。
そろばんは何が「良い」の?保護者が実感できる5つのこと
そろばん(Soroban)は日本の計算道具です。1本の軸に、5を表す珠が1つ、1を表す珠が4つあります。子どもは本物の珠をはじくことから始め、だんだん「頭の中のそろばん」だけで暗算できるようになります。そろばんの仕組みをまだご存じない方は、先にそろばんとは?をお読みください。ここでは、数か月通ったあとに保護者からよく聞く変化をご紹介します。
速く、正しく計算できる
毎回、時間を計る短い練習があります。27 + 45 を頭の中で速く計算できるようになり、さらに大切なのは、間違いが減ることです。珠を一つひとつ丁寧にはじくからです。
「十・百・千」を手で理解する
軸1本がひとつの位です。子どもは位取りを暗記で覚えるのではなく、何百回も珠を正しい場所に置くことで理解します。
集中が長く続く
目で問題を見て、手で珠をはじき、頭で数を覚えておく――これを同時に行います。ほかの活動ではなかなか得られない、全身で注意を向ける練習です。
数をイメージで覚える
暗算のとき、子どもは数を珠のイメージとして頭に置いておきます。電話番号や日付、値段をずっとよく覚えられるようになった、と保護者からよく聞きます。
粘り強さと自信
レベルは少しずつ難しくなり、子どもは自分で時間と点数を記録して、成長を目で確かめます。この「できた!」という気持ちは、どんな数字よりも大切です。
日本式の学ぶ姿勢
始めのあいさつ、正しい姿勢、自分で準備して片づけること。学校や保護者が最初に気づくのは、計算の速さよりもまずこの部分です。
科学的な研究も、限界はあるものの、こうした観察を裏づけています。「頭の中のそろばん」を学んだ子どもは、学んでいない子どもより速く正確に計算できる(Stigler, 1984; Frank & Barner, 2012)。熟達した人ははるかに長い数字の列を覚えられる(Hatano & Osawa, 1983)。5〜7歳の子どもを対象にした3年間の実験では、算数と位取りの理解に明らかな伸びが見られた(Barner ほか, 2016)。いちばんはっきりした効果は計算力と数の理解にあり、それも子どもが規則正しく練習を続けたときにだけ現れます。詳しくはそろばんの効果にまとめています。
そろばんに悪い影響はある?よくある7つの心配と本当のところ
以下の心配には、どれもそれなりの理由があります。ただ、その多くはそろばんそのものではなく、教室の教え方が正しくないことから生まれています。
1.「学校の計算のやり方と混乱してしまう」
いちばんよく聞かれる質問です。本当のところ、そろばんと学校の算数は別々の力を鍛え、互いに支え合います。学校の算数は論理的な考え方と式や答えの書き方を育て、そろばんは数をイメージで扱う力と速さを鍛えます。そろばんが得意な子も、ほかの子と同じように筆算をし、式と答えを書きます。ただ、答えを出すのが速く、確かになるだけです。
混乱が起きるのは、そろばん教室が指や変わったルールを使った「独自の計算法」を、実際の数とつなげずに教えた場合だけです。日本式では、そろばんの上の数は、数字を書くときとまったく同じように左から右へ置くので、子どもは2つの仕組みを覚える必要がありません。
2.「そろばんに頼りきりになってしまう」
むしろ逆です。日本式そろばんの目標は、そろばんを手放すことです。KSCでは、4回目の授業から暗算(anzan)を、6回目からフラッシュ暗算を始めます。本物のそろばんは、珠のイメージを頭の中に入れるための足がかりにすぎません。レベル1を終えるころには、多くの子が何も持たずに、目を閉じて2桁のたし算・ひき算ができるようになっています。
何か月たっても珠をはじくだけで、暗算の時間がない教室なら、それはカリキュラムが正しくないサインです。
3.「スピード練習がプレッシャーになり、勉強が嫌いになる」
この心配にはもっともな理由があります。時間を計る練習はそろばんの一部ですが、時計をどう使うかがすべてを決めます。日本では、時計は子どもが先週の自分と比べるために使い、クラスの中で順位をつけるためには使いません。子どもは毎回、自分の時間と点数を記録シートに書き、先生は一人ひとりの伸びを見ます。
教え方が間違っている教室のサイン:いつも競争させる、遅い子をけなす、いちばん速い子だけをほめる。教え方が正しい教室のサイン:できなかったときに子どもが「もう一回やりたい」と言い、自分の「新記録」をお父さん・お母さんに話す。
4.「そろばんは丸暗記で、考える力ではない」
そろばんのたし算・ひき算は、とても「考える」2つのルールにもとづいています。5の友(5を使って入れかえる:3 + 4 = 3 + 5 − 1)と10の友(10を使って入れかえる:7 + 5 = 7 − 5 + 10)です。計算するには、4は「5から1をひいたもの」、5は「10から5をひいたもの」だと理解していなければなりません。これはまさに、小学1〜2年の算数で身につけてほしい「数を分ける・合わせる」考え方です。違いは、子どもがその数の分け方を、説明を聞くだけでなく「目で見て」「手でさわって」学べることです。
そろばんで代わりにできないこと:文章題、図形、論理的に考える問題。だから私たちはいつも、そろばんは算数を補うもので、算数の代わりではないとお伝えしています。
5.「長く座って珠をはじくと、目や姿勢に悪い」
60〜70分のそろばんの授業では画面を見ません。そして毎回の授業の最初にするのは……正しい姿勢で座ることです。日本式の指導では、姿勢は最初の授業から教える内容です。背すじを伸ばし、そろばんを正しい位置に置き、親指と人さし指を使います。1時間スマートフォンで遊ぶのに比べれば、1時間のそろばんは目にも背中にもずっと良いものです。
6.「時間もお金もかかるのに、効果があるかわからない」
KSCの全カリキュラムは80回で、16回ずつの5つの単元に分かれ、各単元の中でテストがあります。学校内クラブで週1回なら、およそ3学年で全カリキュラムを終えます。効果は量の多さではなく、続けることから生まれます。週末に2時間よりも、毎日家で10分練習するほうが効果があります。少なくとも週1回を続けられそうにない場合は、始める前によく考えてください。
7.「早く始めすぎると良くない?」
ちょうどよい年齢があります。5歳未満の子は、指先がまだ器用でなく、20分座っていることも難しいので、早すぎると飽きやすくなります。5歳からはゆっくりしたペースの幼児クラスで始められます。6〜8歳は「ゴールデンタイム」、9〜12歳は覚えるのが速く、やはりとても効果があります。そろばんを始める年齢については、別の記事に詳しく書いています。
そろばんがお子さまに合わないのはどんなとき?
私たちは、体験授業をお断りすることもあります。合わない時期に習うのは、習わないよりも良くないからです。次のような場合は、そろばんはまだ早いでしょう。
- 10まで数えられず、数字の区別がまだつかない。これはそろばんに数を置くための土台です。まずは数える遊びを、あと数か月続けてみてください。
- 15〜20分ほど集中して座っていられない。KSCの幼児クラスはゆっくりしたペースで遊びも取り入れていますが、それでも机に向かって座ることは必要です。
- ご家庭が「2か月で超高速の暗算ができる」と期待している。2桁の暗算には、ふつうレベル0(16回)をひととおり終えることと、家での練習が必要です。期待がずれていると、毎回の授業が子どもにもお父さん・お母さんにもプレッシャーになってしまいます。
- ほかの習い事の予定がぎっしり詰まっている。そろばんには、子どもにまだ元気が残っている時間が週の中に必要です。金曜日の夜にもう1つ習い事を足しても、たいていうまくいきません。
反対に、そろばんがとくに合うのは、数が「こわい」と感じている子、算数の答えは合っているけれど時間がかかる子、そして座って学ぶ習慣を身につけたい子です。私たちの教室では、この3つのタイプの子がいちばんはっきり伸びています。
そろばんを「正しく」学ぶには?教室選びで聞きたい6つのこと
そろばんの効果も「悪い影響」も、その大部分は教え方で決まります。どのそろばん教室で体験授業を受けるときも、保護者は次の6つを聞いてみてください。
- どんな方法で、どの教科書で教えていますか?
「そろばん」は方法の名前ではありません。日本式、マレーシア式、そしてさまざまな派生があります。5の友・10の友をどう教えるか、かけ算・わり算をどんなやり方で教えるか、教科書は何か、具体的に聞いてください。KSCの教科書Vui học Sorobanは、日本のこどもスクールの教室で実際に教えているやり方どおりに作られています。
- 暗算はいつから始めますか?
答えが「そろばんがじょうずになってから」なら、続けて「それはどのくらい先ですか?」と聞いてください。日本式では、暗算をとても早く(4回目)、小さな数から取り入れます。珠のイメージは、手の動きと並行して育てる必要があるからです。
- 1クラス何人ですか?
珠をはじく指の使い方の間違いは、最初の週から直す必要があります。3〜5人のクラスなら、先生は指の1本1本まで見られます。15人のクラスでは見られません。
- テストや記録シートはありますか?
テストは順位をつけるためではなく、子どもと保護者が今どこにいるかを知るためのものです。KSCでは各単元に3回のテストがあり、合格の基準は決められた時間内に80%正解することです。
- 授業の中に、学ぶ姿勢を育てる時間はありますか?
あいさつ、道具の準備と片づけ、そろばんを0に戻すこと――こうした小さなことこそ、日本の多くの家庭が、計算が速くなるからというだけでなく、子どもにそろばんを習わせる理由です。
- 家では何を練習し、だれが教えるのですか?
良い教室には、短い(10分の)宿題プリントと、お父さん・お母さんがいっしょに取り組めるような説明があります。KSCには、保護者がお子さまの計算のしかたを自分で理解できるよう、無料の練習プリントと本『大人のためのそろばん入門』(ベトナム語)もあります。
日本式そろばんは、ほかの「思考力の算数」とどう違う?
ベトナムでは、「思考力の算数」(ベトナム語で計算や考える力を伸ばす習い事をまとめて呼ぶ言い方)という名前で、中身のまったく違うものがひとくくりにされています。フィンガーマス(指を使う計算)、フランチャイズのそろばんプログラム、シンガポール式の論理的な算数……。それぞれ目標が違い、すべてがイメージによる暗算につながるわけではありません。下の表は簡単なまとめです。詳しい比較は記事そろばんとフィンガーマス、どちらを習う?をご覧ください。
| 日本式そろばん(KSC) | フィンガーマス | 論理・思考力の算数 | |
|---|---|---|---|
| 道具 | 上に珠1つ・下に珠4つのそろばん、そして頭の中のそろばん | 10本の指 | 問題、図、ゲーム |
| 扱う数の範囲 | 制限なし。かけ算、わり算、小数もある | ふつうは99まで、たし算・ひき算 | カリキュラムによる |
| 目標 | イメージによる暗算、集中力、学ぶ姿勢 | 小さな子がたし算・ひき算に慣れる | 推論、問題解決 |
| 合う年齢 | 5〜12歳(大人も学べる) | 3〜6歳 | すべての年齢 |
まとめ:良い習い事です――条件つきで
そろばんは5〜12歳のほとんどの子どもにとって良い習い事です。教室が正しい方法で教えている限り、そろばんそのものから来る「悪い影響」を私たちは見たことがありません。保護者が心配すること――学校の算数との混乱、そろばんへの頼りきり、スピードのプレッシャー――は、どれも教え方の結果であり、教室をよく選べば避けられます。そろばんがお子さまに合うかどうかを確かめるいちばん確実な方法は、体験授業を1回受けてみることです。珠をはじくのが好きか、座っていられるか、そして先生がお子さまの指の1本1本まで見ているかを見てください。
よくある質問
そろばんを習うと悪い影響はありますか?
そろばんそのものに悪い影響はありません。保護者が心配すること(学校の算数との混乱、そろばんへの頼りきり、プレッシャー)は、どれも間違った教え方から来ています。暗算の時間がない、クラスの人数が多すぎる、あるいは時計を子どもが自分と比べるためではなく順位をつけるために使う、といったことです。
そろばんを習うと、学校の算数で計算が遅くなりませんか?
なりません。子どもは先生の指導どおりに筆算をし、式や答えを書きます。そろばんは答えを速く、確かに出す助けになるだけです。そろばんの数は書くときと同じように左から右へ置くので、2つの仕組みを覚える必要がありません。
どのくらいで暗算ができるようになりますか?
KSCでは、4回目の授業から1桁の暗算を、6回目からフラッシュ暗算を始めます。レベル0(16回)を終えたときの目標は、目を閉じて2桁のたし算・ひき算ができることです。伸び方は、毎日の家での10分の練習に大きく左右されます。
4歳でそろばんを始めてもいいですか?
たいていはまだ早いです。5歳未満では指先がまだ器用でなく、15〜20分集中して座っているのも難しいからです。数える遊びや数字を覚える遊びをしてから、5歳で幼児クラスを始めましょう。
そろばんで算数が得意になりますか?
そろばんは、小学校の算数の土台である計算と位取りの理解を助け、集中力も鍛えます。ただし、文章題や図形の学習の代わりにはなりません。水泳が体力づくりを支えるように、そろばんは算数を補う習い事だと考えてください。
無料体験で、そろばんを試してみませんか
ハノイ・Vinhomes Gardenia のセンターで、1クラス3〜5人、1回70分。日本で教えているのと同じ方法です。電話・Zalo 096.802.8484。




